また休日の話になりますが、六月は土日のほか祝日の休みのない特異月です。十二月は平成から令和になって天皇誕生日が二月に引越したため国民の休日のない月になりましたが、月末には年末年始のまとまった休日が控えています。以前は七月、八月も祝日がない月でしたが、海の日、山の日の制定で夏休み、お盆休みに加えて休みの多い月になってしまいました。一方、六月に関しては、祝日を設ける話など、気配もありません。一年の折り返しの月に、1日くらい休みがあってもいいような気がするのですがね。では、祝日を設けるとしたら、何の日がいいでしょうか? 昼の長さが一番長い「夏至」は二十四節気の一つで資格としては十分ですが、あいにく梅雨の真っ只中。日照時間が短くどんよりしているので昼が長いという実感がありません。それに、これから日が長くなるぞという冬至のような高揚感もありません。父の日も、五月の母の日にくらべて影が薄いのと、もともと日曜日ときめてあるのでこれも失格です。10日の時の記念日もいまひとつピンときません。 ところがどっこい、今はすっかり忘れられてしまっていますが、名称の文字からしておめでたい「嘉祥(かじょう)の祝い」という習わしが平安時代のはじめから江戸時代まで、毎年六月十六日にさかんにおこなわれていたのです。ことに、江戸時代には、神君・徳川家康公が命からがら切り抜けた三方原の戦いの際、たまたま拾ったのが嘉定銭だったとか、助かったお祝いにと菓子商大久保藤五郎が菓子を献上、それを家臣に分け与えたのが始まりだとかの逸話も絡めて、大きな恒例行事になったという。祝いの当日は対面所の大広間にずらりと菓子を並べ、参賀の諸大名や旗本たちに一包みずつ配られました。御三家や重臣には将軍自らが配ったといわれます。将軍退出後には、下役にまでふるまわれ大奥でも同様な行事が行われました。◆◆毎朝テレビをつけると、いろんなスイーツを紹介する番組がさかんです。おむすびがハンバーグに迫るほど人気が高まっているように、和菓子も洋菓子に負けないくらいもっと人気が出ていいような気がします。なんといっても見た目のうつくしさ、季節をもりこんだ趣向は洋菓子にはまねが出来ません。それと、甘みも丁度良い。海外で洋菓子を買って食べたらその甘さに辟易したという経験は多くの方がお持ちでしょう。和食がユネスコの無形文化遺産になった際、和菓子も、和食の一部として含まれたようですが、それでは添え物的で気の毒。甘党の私としては「嘉祥の祝い」をぜひ「六月の祝日」に推挙したい思いですが、賛同は得られるでしょうか。ちなみに、六月十六日は全国和菓子協会が1979年に「和菓子の日」に制定しましたが、いまひとつキャンペーンが行きわたっていないように感じます。バレンタインデーのように、この日に美味で美しい和菓子を大切な人に贈ると幸せになれるといったイキな演出をするのもいいのではと思うのですが。(写真 Amazon)

