MOBA・幸語歳時記「敬老の日」

九月の「敬老の日」は、もともとは盆に行われた行事「生身魂(いきみたま)」というのが起源のようです。盆は故人の霊を供養する催しですが、生きている目上の人に対しても礼を尽くそうということで盆または盆の前に、両親が揃っている場合は刺鯖や飛魚を贈ったり、婚家先の娘が実家の親と会食したり贈答をするといった習わしでした。もちろん祖父母の長寿を祝うのはとうぜんですが、昔、人生五十年といわれた当時は、子供が成人した頃の両親は、結構な歳に見られたのです。「いきみたま」は生身魂のほか生見玉、生御霊、生身魂などと表記されますが、いずれにしても生きていながら霊魂の意。いくら目上を敬うとはいえ霊魂扱いするとはあんまりだ、という気がしますが、昔、といっても戦後1960年代頃までは「村のはずれの船頭さんはことし60のおじいさん」と童謡で相当の年寄りのように歌われ、小説の中にも「55歳の老婆」なんて表現が出てきても、だれも文句をつけなかったのですから今とは感覚がまるで違います。もっと遡れば、家の中でも杖を使うことが許されるという意味の「家に杖つく」という古い中国の表現は「50歳」のことでしたし、俳聖と言われる松尾芭蕉の命日の陰暦十月十に日を、「芭蕉忌」「時雨忌」のほか、ひろく「翁忌」『翁の忌」と呼び、芭蕉翁と尊称されますが、享年はなんと五十一歳だったのです。◆◆現在のの「敬老の日」は元は「老人の日」だった9月15日を、1966年に名称を変え国民の祝日にしたものですが、2003年から9月の第3月曜日(ハッピーマンデー)として連休となるようにしたものです。◆◆近頃の「敬老会」は、だいたい町会や自治会ごとに集まって老人を敬い祝う催しをするのが一般的ですが、敬う側より敬われる老人の数のほうが圧倒的に多く、敬老はそっちのけでまあ老人同士のカラオケ大会といったところが大勢でしょうか。もちろんカラオケを楽しむのも心身には良いことですから結構なことですが、それだけ元気な老人なのですから、さらに前向きに老人パワーを生かす方法を考えてはどうでしょうか。いささか我田引水になりますが、「モアベターエイジングとは何か」を考える日とするのも、初秋の一日にふさわしいように思われます。